こんにちは、元地方公務員のキキです。
私は、400万を元手に5,000万円まで資産を貯め、アーリーリタイア(FIRE)しました。
現在は株式投資での資産運用やSNS・ブログの執筆をメインで行っています。
今回は、20年勤めた市役所勤務から感じた「仕事上での公務員のメリット・デメリット」を紹介します。
「住宅ローンが組みやすい」など仕事外のメリットは今回は省くよ。
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はじめに
私は就職氷河期後期の採用です。
民間はもちろん地方自治体すら採用を絞りに絞っていた時代でした。
市役所は民間と違い倒産がないので、就職先としても人気。
数十倍の難関でした。
いま振り返ると、このときの世代の採用数を極端に絞ったことが、いびつな労働環境を生み出したともいえます。
ある年代の採用数が少ないということは、職階別に分かれている業務内容が正しく分配されないということ。
後述しますが、この構造のいびつさが、近年になって特に地方自治体職員を苦しめることになります。
当時の情勢とはいえ、長期的な組織運営を見越して、採用を緩和すべきだったと思います。
以上、かんたんに私の就労時の状況を振り返りました。
次からは、20年の市職員時代を踏まえて、公務員のメリットとデメリットをお話しします。
公務員のメリット
年次休暇(有休)がとりやすいのは、公務員の大きなメリットのひとつ。
年間20日(繰り越しで最大40日 ※自治体等による)の休みは、フルで消化できれば働き方がかなり楽になります。
管理職の裁量で休めないときもありますが、実際断られることはほぼありません。
1日~2日程度なら、繁忙期を除いていつでも休めるのは助かりました。
市役所に勤めていて本当に勉強になった部分です。
たとえば税務関係、観光関係、商業関係、工業関係、農業関係、教育関係。
長く居れば居るほど、異動によりさまざまな分野の業務に関わることになります。
もちろん覚えることが多くて大変なのですが、各”業界”の仕組みを知れたのは良かったです。
近年、窓口でのクレーマー対策が話題になりますが、市民の皆さんのほとんどは善良です。
自ら地域を良くしようと努力するポジティブな方もたくさんいらっしゃいます。
中には、ふつうなら関われないような人にも。
老若男女関わらず、尊敬できるような人に出会える。
そんな機会に恵まれるのも、市役所の仕事の魅力だと思います。
公務員は、法令や条例に基づいて業務を遂行するため、自然と法令関係に強くなります。
また、事業や手続きについての要領要項などを自ら作成することもあり、手続きにも強くなります。
市役所にお勤めの方は理解してもらえると思いますが、日本はいろんな申請さえできればたいていなんとかなります。
法令・手続き・申請に苦手意識を持たなくなる。
それも公務員のメリットかもしれません。
公務員のデメリット
私のいた自治体では、職員ひとりあたりの業務量が毎年増えていたと感じています。
その背景には、氷河期採用を絞り、中堅職員が不足していることが挙げられます。
中堅職員がいなければ、指示する係長や指示を待つ若手の間でうまく仕事が回りません。
そして、正職員を補充せず、会計年度任用職員頼みの体制になっていること。
さらに、国から降ってくる業務が多すぎること。
コロナ給付金、ワクチン接種、システム標準化、定額減税など枚挙にいとまがありません。
これらが複合的に相まって、ひとりあたりの業務が激増する事態になっています。
職員ひとりが抱える重い業務も、毎年増えていました。
重い業務とは、解決までに時間や労力がかかる仕事のこと。
それは経験年数に応じて増えたというより、以前なら係長が分掌していた業務を主任が、主任級の業務を主事が―という感じで仕事が降りてくる。
もしひとりで全部抱え込もうと思ったらパンクして病む。
なので結局は回して薄めるしかないのですが、それもに限度があります。
重い業務が増えている背景には、やはり氷河期採用を絞ったことによる中堅職員の不足が挙げられます。
特に私のような中堅職員の不足が著しい。
ある程度の業務は若手ではかなり難しく、中堅以上が受け持つべきですが、すでに仕事が多すぎてパンク状態。
業務が「仕事ができる人に偏る」という現象も多く見られました。
業務を減らせない構造は、地方自治体独特かもしれません。
一度制度を導入してしまうと、削減はサービス低下とみなされ、議会で追及される。
だから一度増えた業務は、よほどの理由がない限りなかなかスクラップできない。
本来は首長や議会で削減を進めていくべきなのでしょうが、そうはならない。
サービス低下は、政治家(首長や議員)にとって票を失うマイナス要因だから。
なので業務はビルド&ビルドされ、職員の仕事も比例して増え続ける。
このような構造があるかぎり、役所の業務が減ることはないでしょう。
パワハラには大分厳しい風潮ができつつありますが、役所はまだ甘いです。
なぜなら、庁内で首長は絶対的な権力があるから。
部長など幹部クラスや議員も同じです。
ふつうの職員はよほどのことがない限り逆らえません。
また、パワハラが認定されたところで「指導の範囲だと思っていた」と抗弁すればわずかな処分で済む。
それどころか、パワハラ上司が出世していく。
こんなことがまかり通っている間は、パワハラは減りません。
私も2人の上司からのパワハラでうつとなり、退職を余儀なくされました。
パワハラに甘い体質は、即刻改善してほしいと願っています。
上司が「サイコパシー」だったら|パワハラ対策を解説市役所など地方公務員には、3年から5年の一度の部署異動があります。
これが転勤なみに大変。
なんせ、まったく知らない別ジャンルの業務を4月1日からいきなりやらなければならないから。
引き継ぎ事務もあるにはありますが、これも業務をしながらなので非常におざなり。
数時間の引き継ぎで5年間の業務を教えられるわけないですよね。
異動制度は業者との癒着を防ぐなどのメリットもあります。
ただ、職員個人目線では明らかにデメリットというかロスが多いですね。
引き継ぎのために取れる時間が短すぎだと思います。
これも結局、業務を減らせないせいで、引き継ぎに時間をかけられないという結論になります。
市役所の業務にはそれぞれ「担当」「副担当」というのがあります。
形式上、複数で受け持って仕事をすることになっていますが、これは建前。
実際は、それぞれが膨大な担当業務を抱えているため、ほとんどが「ワンオペ」です。
同僚を手伝おうにも、自分の業務に精一杯で手が出ない。
こういう状況ではダブルチェックや進捗確認ができないので、ミスが出やすくなります。
20年前と比べて、ワンオペはとても多くなったなと感じるよ。
仕事上で発生したミスなのに、組織ではなく末端職員を責める風潮もできあがりつつあります。
十分な組織のバックアップがあったかの検証もされず、民法による賠償責任や連帯責任で職員個人が穴埋めする。
故意や重過失でもなければ、本来こんなことが許されていいはずがないのです。
これでは、職員が安心して住民のために働けません。
終わりに
20年の公務員生活を振り返って、個人的によかったことはいっぱいありました。
人との出会いや、勉強になったこともたくさん。
市役所職員として尽力した日々は、私の誇りであり、後悔もしていません。
反面、この20年で公務員の労働環境はかなり悪化していると感じます。
この傾向が続けば、地方自治体のマンパワーは次々と失われ、行政能力の低下が起きかねない。
そのことについて、微力ながら警鐘を鳴らしたいと思います。
※本稿は、折を見て補記校正していきたいと思います。
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